03.場所探し

03_050921_PICT0025 (2).jpg

ぼくらはお店の場所を探すにあたり、まず友人から紹介してもらった不動産屋の担当者を訪ねました。この人は「おもしろい」物件を紹介してくれると、界隈ではちょっと知られた人でした。

最初に紹介してもらったのは……、なんだっけ? とにかくたくさん見ましたからね。
ボールを床に置くとコロコロ転がってゆく長屋とか、場所は悪くないけどえらく細長い建物とか。予算的な制約も手伝って、「ちょっと」変わった物件が次々と現れます。

でも驚くのは、そんな物件でもすぐに借り手がつくこと!
実は奈良はここ数年ちょっとしたブームです。雑誌でもよく取り上げられ、観光客は年々増えています。おかげで以前はひっそりとお年寄りが暮らすだけだった路地にも、お店らしきものがポツポツと出来はじめました。県外からの求めも多く、借家は需要が切れないのです。
ぼくらは気に入った物件に出会えるまで焦らずじっくり探そうと考えていたので、ちょっと迷っても急いで押さえることはしなかったのですが、数日後に「あの物件はどうなりました?」と聞くと「もう決まりましたよ」ということが珍しくありませんでした。
03_060506_PICT0052.jpg

そうそう、ひとつ借りられなくて残念だった物件がありました。
それは東大寺のすぐ裏手にある古い納屋で、大仏殿や若草山が目の前に見える閑静なロケーションがとても気に入ったのです。そこはまだ正式に借しに出されてはいなかったものの、「持ち主がいい人がいれば貸したいと考えている」との情報を知人から得て、さっそく見に行きました。

外から眺めただけでしたが、その古びた佇まいや緑に囲まれた環境に一目惚れして、「ここだったらいいね」と初めて夢が膨らんだ場所でした。夢が膨らみ始めると勝手にもうお店のイメージが湧いてきます。「車は置けないけどむしろ歩いて来てもらうことに特化できていいよ」「竹林がすぐそばだし夏は冷房要らずかも」と、どんどん空想は広がります。結局そこは貸しに出されず、ご縁はなかったのですが、自分のお店像が具体的に動き始めるいい機会になりました。
03_051128_PICT0006 (2).jpg

そんなこんなで、半年が経過。その間賃貸物件を見るだけでなく、気になるお店に行ってみたり、図書館で本を探してはあーでもないこーでもないとイメージを膨らませたりもしました。
場所探しはなんといっても「出会い」。結局タイミングがすべてなので、いい出会いに恵まれるまで焦らず待つしかありません。それに多くの物件を見て回れば、自分の求めるものがより明確になってゆくのが分かります。自分の価値観がはっきりしてくるのです。すべてが理想に適うということはめったにないけれど、これだけは譲れないという条件がぎゅっと絞られてくれば、あとは出会いの方からやって来る……
そしてある冬の昼下がり、ぼくらはあの路地裏の古家と出会ったのでした。
(2007年4月)

この記事へのコメント