05.屋根を葺く

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図書館で借りた『屋根』という本を読破した直後から、世界がちがって見えました。大げさですが、本当です。
なんて面白いんだ、屋根!
近所を散歩していても「切妻」「寄棟」「入母屋」……とその形状が気にかかり、「瓦」「スレート」「金属」……とその材料に着目し、勾配や、果てはそれが作られた年代にまで想いを馳せずにはいられない。会う人ごとに「いま屋根にハマっててね」と語り始め、胡散臭がられる始末。
しかしそこらじゅうにある屋根というものを、今まで何十年も、実は何も知らずに眺めていたのだと。いや、見ているようで何も見ていなかったのだ! そのことに愕然としました。 そんなわけで、屋根だけでコラム10話くらい書けそう……だけど、さすがにそんな余裕はありません(工事と同様にどんどん進行が遅れてしまいそう)。 わが古家はともかく屋根の修理が急務でした。
雨漏りしていた箇所の天井を剥いでみると、見事に青空の見える穴が。季節は四月。ぐずぐずしていると梅雨に入ってしまいます。

最初は屋根も自分で、と考えました。しかし「危ないので屋根だけは登ってくれるな」という家族の強い要請には抗いきれず、工務店に相談することにしました。
でもこれについては心残りはありません。実際に工事を見て、とても一人でできる作業ではないと分かりましたので。(大工さんでさえ傷んだ野地板を踏み抜き、二度も転落未遂を起こした!)
本職の仕事は何から何まで、目を皿のようにして観察していました。もちろん施主がずっと現場にいると大工さんたちもやりづらいでしょうから、邪魔にならないよう掃除をしたりしながら遠慮がちに(でも密着)。
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古い瓦をめくると、その下からは土が現れます。昔は瓦の固定と断熱を兼ね、土が盛られていました。そしてその大量の土を取り除くと、今度は杉皮の下地が現れます。今ならルーフィングという防水シートを敷くところですが、昔はすべて天然素材です。
杉皮を取り去ると、いよいよ屋根を覆うのは丸太をスライスしたままの不揃いな野地板だけになります。薄暗かった屋内にもサンサンと太陽が降り注ぎました。その爽快さといったら! 明るいっていいなぁ。このまま屋根無しでいく!? なんて。一瞬ホントに思いました。青空カフェっていうのもいいなぁ、とか。

しかしそんな呑気なことも言ってられません。大工さんたちはさっそく野地板の修復と不陸直しに取り掛かります。
不陸とは凸凹のこと。屋根の下地は積年の瓦と土の重みで歪んでいます。土の場合は土を均すことでごまかせますが、今回はガルバニウムという金属板で葺き直すため、下地からしっかりと平面を出す必要があるのです。
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この下地直しは、大工さんがもっとも苦心した工程でした。
それだけに電動工具を両手に持って屋根の上を縦横に働き回る様子は、見ていて飽きませんでした。休憩時間にはお茶菓子を差し入れつつ、工具選びのコツや使い方を教えてもらうのも忘れずに。
そして一週間後、屋根はピカピカの新品に生まれ変わりました。新設した2か所の天窓からはまぶしい自然光が注ぎ、もう昼間から電灯を点ける必要もなさそうです。いやはや爽快、あらためていい空間になりそう……
何もかも順調、と思えたのも束の間。実はこの「不陸」こそが、全面大改修への警鐘となる重大なシグナルだったのです。
(2007年6月)