06.シロアリ恐い!

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屋根を葺き替えてみて初めて分かったこと。それは雨漏りよりもっと深刻な傷みがある、という衝撃の事実でした。

屋根の不陸を直す上で、北側の一部が特に大きくたわんでいることが確認されました。ただちょうど真下が台所だったので、「炊事の湯気で傷んだのかな?」くらいに当て推量していたのです。が、原因はもっと根元でした。

「こりゃ……、ダメだね」
大工さんの手が止まり、現場責任者(工務店社長)と何やら耳打ち。
「ナンです、ナンです?」
遠慮がちに近付くと、大工さんが一本の柱を金槌で叩いて言います。
「ね、中もうカッスカス」
すぐには事情が呑み込めませんでした。確かにその柱は、他の柱と叩き比べるとポンポーンと軽い音がします。でも何故? 首をひねると同時に、ハッとしました。まさか…、シロアリ!?
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シロアリの被害をまざまざと見たこと、ありますか?
たいていパッと見には目立たないのですが、よく見ると木の表面に小さな穴がプツプツとあるのです。それだけなら、虫喰いだとしてもちょっと齧られた程度にしか見えません。ところが切って断面を見るとびっくり仰天! 酷いところは木の繊維がスポンジ状に残っているだけで、指で引っ掻いてもボロボロと崩れ去ってしまいます。無いも同然なのです。

木材というのは繊維方向(つまり柱だと縦方向)にたいへん強く、1平方センチ当たり約1トンもの重さに耐えるといいます。たとえば10センチ角の柱なら10×10=100トン! かなりの力持ち。
「だからもし九割方シロアリに喰われても、とりあえず数トン分の重さには耐えられるんですよ」
気休めなのか慰めなのか、大工さんはそう言ってくれるのですが……
後で柱を抜き、片手でひょいと持ったその軽さといったら! 年老いた母を背負いその軽さに思わず涙する、とかいう短歌じゃないけれど、重いはずのものが存外に軽かったとき、人はやるせない寂寥を覚えるのであります。
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しかし泣いてばかりもいられません。被害の実態を見た以上、修理は喫緊です。
大工さんは屋根の不陸直しのついでに、特に酷かった三本の柱には対策を施してくれました。一本は根継ぎ(根元だけ切って新しい材木を継ぐ)、一本は副え柱(新しい柱を隣に副わせて支える)、そして最も酷かった一本は丸ごと取り替えです。
幸い補修に必要な材は、いずれも解体した部材で間に合いました。それらの補修を半日でサッとやってのける手際はさすがです。
ただあくまでも屋根工事の一環としての補修であり、それ以外の柱は手付かずでした。大工さんたちが帰ったあと、ぼくは独りコツコツとそこらじゅうの木を叩いて回りながら、得体の知れない不安に包まれていました……
(2007年7月)