23.灯り

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本当は、自然光が一番好きなのです。
光量、質、そして時々刻々と変化する表情。太陽の光に勝る照明はやはりないように思います。
ただそれだけではやはり不便なために、屋内外に様々な照明器具を付けたくなります。で、問題は何処にどれだけ付けるか? 明るさや照らし具合を確かめるには実際に器具を点けてみるのが最良ですが、設置した後で変更するのは施工上も費用面からも難しいところ。つまり想像だけで判断せざるをえず、かくしてまたもや瞑想時間が増えてしまうのであります。

照明といえば北欧、というくらい近年は特に人気がありますよね。
北欧は緯度が高いために、夏の日中はとても長く、逆に冬は夜が長い風土です。そこで冬の夜長を心地よく過ごせるよう、照明やインテリアへの関心、感度が高いのだと聞きなるほどと納得しました。
ぼく自身、北欧に興味を持ったきっかけのひとつが照明でした。器具の形状もさることながら、その使い方に惹かれたのです。
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ある秋、初めてフィンランドの首都ヘルシンキを訪ねたときのこと。もともと低い太陽が午後4時くらいにはかなり落ちて、薄暗くなってきます。すると街灯りが灯り始めるのですが、日本に比べるとそれはかなり控えめです。ネオンや看板類は少ないですし、店内照明も昼間のように明るくした場所はあまり見かけません。そもそも都心の大型店でさえ早々と店じまいしてしまうのです。賑わっているのは一部の飲食店くらいで、街はゆっくりと静かに夜を迎えてゆく印象でした。
レストランのテーブルにはキャンドルが置かれ、そこに時折身を寄せあいながら客が小声で語らっています。あるいは闇に紛れ、笑っているのか物思いに耽っているのかも分かりません。人によっては寂しいと感じるかもしれませんが、ぼくはその雰囲気がとても好きでした。

照明に対する考え方の違い。私見ですが、日本では特に照明には明るさを求める傾向が強いように思います。いわば太陽の代替品として、日没後もできる限り昼間の明るさを維持しようと考えるからか、空間全体を照らすように照明を配置する例を多く見かけます。
一方北欧の照明は「火」に近いイメージがあります。昔からの照明である焚火などの延長線上にあり、必要以上に闇を照らし出さず、人の方から灯りに寄り添って闇夜をやり過ごすのです。火には温もりもあり、人が集えば語らいが生まれます。
まず夜を夜として、闇を闇として受け入れること。これが案外、便利な生活に慣れると難しいものです。
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今はすっかり早寝早起き生活なので、夜はほとんど出歩きません。そうすると、たまに夜外出したときに「畏れ」を感じることがあります。子どものころに感じていた、夜そのものの気配とでもいうか。ちなみに午後九時くらいの話ですよ。何せもうすぐ寝る時間ですから。

暗くなれば手元に必要なだけの灯りを灯す。目が疲れるのでやがて手仕事は仕舞にする。寝床につく前にちょっと表へ出て身体を伸ばす。見上げた夜空には眩いほど満天の星空……
そんな暮らしの方が、夜中に買い物ができる生活よりもずっと贅沢に思えるんだけどなあ。
(2008年12月)