24.見えない部分

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例年になく酷暑続きの夏。
しかし工事は日々進んでいます。進めなきゃならない。すでに内装工程なので、全体からすると残り2割は切ったと思います。切ったはず!
でも現場の実状を見てそう共感してもらえるのは、ある程度施工というものを知っている人。悲しいかな、そうでないほとんどの人は「まだ、これだけ!?」という反応です。無理もありません。あちこちに材料が積み上がっていますし、骨組みが剥き出しの部分も多く、「仕上がり」と呼べる部分はまだあまり見えていませんから。

ただ他の工事現場を観察してみてもそうですが、工程の大半は構造や下地の施工に費やされます。一方「化粧」と呼ばれる仕上げ工程は案外早いものです。いつまで工事しているのか……と思ったら、ダダッとわずか数日で完成即オープン! なんて、ショッピングモール等にはよくありますよね。ま、我が現場はさすがにそうはいきませんが。
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建築家でない一般の人が、建築の中で最も「見る」のはどうしてもこの化粧です。白く平滑な壁、木目の美しい板張り、装飾、建具など、初めて訪れる場所でまず目に付くのがこの部分。また照明やお洒落な家具といったインテリアも広い意味で化粧の一部といえます。従って化粧がその建築への評価を左右するといっても過言ではありません。
ただ重要な部分であることは間違いないのですが、実際そこに掛けられる工程は短いですし、もっと言えば全体の工費に占める割合もふつうあまり高くないと思います。何故か?
工費においては、安く抑えやすい部分だからかもしれません。基礎や構造といった屋台骨を値切るのはさすがに心配ですが、タイルをクロスに、無垢板をプリント合板に、などといった箇所から予算にあわせてグレードダウンするわけです。あとでやり直すのも比較的容易ですし、もとより将来リフォームする可能性が高い部分でもあります。

化粧とはよく言ったもので、その出来不出来は下地の状態に大きく影響されます。例えば壁紙を貼る場合、下地となる石膏ボードの継目が適切に処理されていないと、壁紙表面に凹凸やひび割れが発生する原因になります。またそのボードも、下地の木構造できっちり平面や角が出ていないとどうしても綺麗に収まりません。木構造を精確に作るには、柱や土台に精度が求められます。それらはすべて基礎の精度に左右され、ひいては地盤の安定度に辿り着きます。実際には下地の問題を上(化粧)で補う、あるいは隠すことも往々にしてありますが、それは結局手間が掛かる上に収まりも不十分になりがちです。
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また力強い梁をそのまま剥き出しにするなど、構造自体が十分鑑賞に堪え得るため敢えて化粧(覆い)をしないという見せ方もあります。究極的には、構造そのものに十分な存在感があれば装飾は蛇足なんですよね。
とまれ構造にも理想を求めればそれこそ青天井。手間暇掛ければ良くなるのは分かってるんだけど、そこをアレした分、化粧でアレしてソレしとけばそこそこアレな感じになるんじゃない? というのが人の性でしょう。どのあたりを落とし処にするかは人によりピンキリですが……
あくまでも建築の話です。あしからず。
(2009年1月)