25.腰かけ気分

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客席(椅子)のうち約7割は作り付けになります。即ち自作しなければならないのですが、これが実に奥深く難しい!
例えば座面。基本は水平です。でも背板にもたれて座るとお尻を前へ押し出す方向に力が加わるため、座面が後ろにやや傾斜している方が安定感を得られます。また個人差はあるにせよ、背板にお尻が当たらないよう、背板の下の部分(お尻の後ろ)が適度にえぐれている方がより具合がいいように思います。

またこの座と背の傾斜は、座る目的によっても変わってきます。ふつう食事をするときには背板にもたれず上体を立てて、あるいはやや前傾して浅く腰かけるので、座面はむしろ水平な方がいいでしょう。座と背を傾斜させるのは、喫茶店などリラックスしてゆったり座ってもらう場所の椅子です。とはいえあまりにのけぞってしまうと飲食しづらいので、この加減が悩みどころ。

そこで例によって様々な場所で座ってみるわけです。これは意識してみるとけっこう面白い。
ある公園のベンチは傾斜がかなり大きくて、座ると自然に仰向け加減になり、眼前には青空が広がるのです。無意識のうちに呼吸も深くなり、気持ちが落ち着きます。まさに適材適所なのではないでしょうか。

意外な発見は、座り心地を左右するのは材質よりもむしろ形状だということです。屋外のベンチは金属製も多く一見硬くてお尻が痛そうに思えますが、座ってみると案外身体がすっぽり収まっていい案配だったりします。逆によく沈む柔らかいソファは、立ち上がるとき力が要るので動く気力を低下させてしまうことも。他にも肩や膝裏が当たる部分の角度、座面の奥行き等、座り心地に影響する要素はかなりの数に上ります。しかもそれらが複合的に絡むとなると……。いやはや、椅子って本当に奥深い。
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ところで、最近ちょっと腰のだるい状態が続いていました。天井の低いロフトで長時間腰を屈めて作業をしていたせいかも。ただ現場での作業中は特に気にならず、帰宅後パソコンなどに向かっているときに腰の疲れを感じるのです。よく言われますが、座る姿勢というのは実は身体にとって意外に負担なんですよね。
以前から本格的な腰痛を警戒して簡単な体操は続けています。でも高機能な椅子ならもっと楽かな? と考え、あるとき家具売場でお店用の椅子を見るついでに、デスクチェアもいくつか試してみました。

今は高機能チェアも種類が増えて、各部がきめ細かに可動したり、身体が宙に浮く感覚になったりするものまで、その進歩たるや凄まじいものがあります。
中でも人間工学を駆使したチェアの先駆けとして有名な、ハーマンミラー社のアーロンチェアなんかはやっぱりさすが。何ていうか、いい靴を履いたときガンガンどこまでも歩いていける! と感じるように、いつまでもガンガン(?)座っていられる! みたいな。急にバリバリ仕事できるヒトになった! みたいな。そう思わせる使用感が、確かにあります。でも高いんだなあ。いいものはやっぱり。
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いいものを知ることは大切です。それによってモノを作る上での尺度が形成されますし、優れたものは本来の目的や機能を超えて様々な刺激も与えてくれます。
ただし、今はひとまず椅子の探求はほどほどで留めておかねば。これ以上完成を延ばさないためにも。
(2009年2月)