(番外編)ちょっと、そこまで。

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実は、先日ヨーロッパへ行ってきました。
え!? ただでさえ工期が延び延びなのに! ○※△×…■!!
いや、ただのバカンスではないのです念のため。ともかくせっかくの機会、旅先では建築に対するかつてない強い関心をもっていろいろと見聞してきました。これから作る窓や扉、内装などに、いいアイデアがあればぜひ真似したいですしね。

今回自分でも面白かったのは、まず建物の構造や設備関係に目がいってしまうことです。どんな材料や方法で作られたのか、その施工過程を自ずと考察してしまいます。窓を何度も開け閉めしたり、そこらじゅうの壁を叩いてみたり、排水口を覗き込んだり……。ま、ちょっと怪しかったかもしれません。
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そこでまず思ったのは、やはり日本人は几帳面だなあということ。向こうは良くも悪くも大雑把です。日本の感覚で見れば細部の仕上げがいい加減で、これでいいのか? と驚くものも多々あります。壊れっぱなしだったり。
工事現場もたくさん見かけましたが、どこでも職人は比較的のんびりと作業していて、しかも図面などお構いなしに思いつきで(?)進めているような気配すらあります。材料がなくなったから今日はここまで、次は仕入れが決まってから考えよう……みたいな。

あるエピソードをひとつ。ハンガリーで聞いた実話です。
2人の作業員が古い橋脚の落書きを消していました。ブラシでゴシゴシ、あっちもこっちも、数日間かけてやっときれいに消し終えました。と思ったら、せっかくきれいになった直後に、今度はすべてを壊してしまったそうです。……壊すならどうして掃除を?
でも最初こそ驚くのですが、だんだん慣れてくるとむしろ親しみを覚えてきました。他ならぬ自分もまた、期せずしてそんなふうにスローな建築をしている一人なわけで。
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一方2度目の訪問となったフィンランドのヘルシンキでは意外なものも見ました。
初めてのときは市街の中心を見て回り、荘重かつ端麗な建築群にすっかり魅了されたのですが、今回は近郊にも足を伸ばしてみたのです。するとそこには伝統的な石材や木材による建築ではなく、新建材による小さな住宅やアパートが比較的狭い間隔で並んでいたのです。それはまさに日本の新興住宅地とよく似た風景。集合住宅などは天井高も日本のそれとほとんど変わらなさそうです。もちろん人は少なく道路も広いので、まったく同じではありません。しかし風土色豊かな建築がノスタルジーになりつつあるのは、どこも同じなのかもしれません。

またヘルシンキでは念願の野外建築博物館も訪ねました。都市近郊の小さな島の中に、18世紀以降に建てられた農家や教会を国内各地から移築して集めた場所です。ほぼすべてが木造建築(いわゆるログハウス)で、どれも魅力的で興味深いものでした。
しかしもっとも印象的だったのはその島の自然でした。道を歩いているとリスが駆け寄る! 鳥は集まる! 手を差し出せば頭に水色の筋が入った小鳥がちょんと指先に乗るのです。その軽さと暖かさといったら……、今も忘れられません。他にも鴨やカラスやカモメが続々と寄って来ます。餌が目当てだとは分かっていても、その愛嬌にはやられっぱなしでした。
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街中でも感じたことですが、どうも動物たちが人間をあまり恐れないようなのです。ひょっとするとナメられているのかと思うくらい、彼等は堂々としていました。人の少なさと関係があるのかもしれません。
また緑地の保全に対する意識の高さも無関係ではなさそうです。建築も建造物単体ではなく、本来その立地や環境と一体的に評価されるべきものです。そういう意味でも街全体から学ぶことが多々ありました。

しかし振り返ってみれば、奈良にもお鹿様がいるじゃないですか! つい慣れてしまって忘れがちですが、海外からの旅行者はきっと他にはない楽園気分を味わっているのでしょうね。遠い異国にて、自分の身近にあるものの稀有さにも改めて気づかされました。
(2007年6月)
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